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量子コンピュータの「論理量子ビット」が実用段階へ——投資妙味を関連米国株から読み解く

フランスのPasqalが、論理量子ビットによって物理量子ビットの計算エラーを平均50%以上削減したと報じられました。エラー訂正のオーバーヘッドが新たなノイズを生むという長年のジレンマを、実用的な計算タスク(微分方程式の求解)で乗り越えたとされる点が、市場の関心を集める可能性のある材料と見られます。本稿では、このニュースを起点に、米国市場に上場する量子コンピュータ関連の純粋プレーヤー(ピュアプレイ)について、技術・財務・バリュエーションの観点から整理を試みます。なお筆者の見解は投資助言ではなく、最終的な判断は読者ご自身でお願いしたいと思います。

そもそも今回のニュースは何がすごいのか

量子コンピュータの計算単位である量子ビットは、とても繊細で、わずかな環境の変化ですぐに間違えてしまう性質があると言われています。そこで複数の量子ビットを束ねて間違いを直す「エラー訂正」という仕組みが研究されてきました。

ところが、これまでは皮肉な問題があったようです。間違いを直すための追加作業が、かえって新しい間違いを生んでしまう。結果として「エラー訂正するより何もしないほうが正確」という本末転倒な状態が続いていたとされています。

今回Pasqalは、微分方程式を解くという実用的な計算問題で、エラー訂正したほうが本当に正確になることを示したと報じられています。報道によれば、約50%のエラー削減を実証したとのことで、実用化に向けた節目になりうると評価されているようです。

Pasqalは米国株では買えない

ここで投資という観点から見ると、ひとつ注意点があります。今回の主役であるPasqalはフランスの非上場企業のため、米国株として直接購入することはできないようです。

また、Pasqalが採用している「中性原子方式」という技術に最も近い米国企業としては、QuEra ComputingやAtom Computingが挙げられるようですが、こちらもいずれも非上場とされています。QuEraはGoogleと、Atom ComputingはMicrosoftと連携して開発を進めているとも報じられています。

Pasqalは投資対象には含まれない点に留意

まず押さえておきたいのは、今回の主役であるPasqalがフランスの非上場企業であり、米国株として直接投資できる対象ではないという点です。

技術的に最も近い「中性原子方式」の米国勢としては、QuEra ComputingとAtom Computingが挙げられますが、いずれも非上場とされています。QuEraはGoogle、Atom ComputingはMicrosoftと連携して開発を進めていると報じられており、中性原子方式では先頭グループに位置づけられる存在のようです。

つまり「今回の技術テーマにピュアに投資する」という選択肢は、現時点の公開市場には見当たらない、というのが整理の出発点になります。

上場ピュアプレイ3社の現状

公開市場で投資可能な代表的なピュアプレイは、技術方式の異なる3社に大別できるようです。直近の決算とバリュエーションを併せて見ていきます。

IonQ(IONQ)はイオントラップ方式を採用しています。2026年第1四半期の売上高は前年同期比755%増の6,467万ドルに達したと報じられており、これはCEOが「同社史上最大の四半期」と表現したと伝えられる水準です。時価総額は2026年初時点でおよそ200億ドル規模とされ、上場3社のなかでは突出した規模感です。一方で、純利益には11億ドル規模の非現金のワラント評価調整が含まれており、調整後EBITDAは赤字とされる点には注意が必要かもしれません。会計上の利益と実態のキャッシュ創出力には乖離がある可能性があります。

Rigetti Computing(RGTI)は超伝導方式を採用しています。2026年後半に150量子ビット超、2027年に1,000量子ビット超のシステムを目標に掲げているとされ、IBMやGoogleに対する超伝導分野の有力な挑戦者と位置づける見方もあるようです。財務面では、5億6,900万ドルの現金・投資を保有し、無借金とされる点が下支え材料と見られます。ただし、同業のIonQが売上で大きく先行しており、PSR(株価売上高倍率)の割高感を指摘する声もあるようで、バリュエーションの正当化が課題になりうると考えられます。

D-Wave Quantum(QBTS)は量子アニーリング方式を採用し、最適化問題に特化しているとされます。5億8,840万ドルの現金を保有するとされ、財務基盤は相対的に厚いとみられます。2026年1月にQuantum Circuitsを買収し、ゲートモデルにも展開する方針と報じられており、技術ポートフォリオの拡張を図っている可能性があります。

セクター全体の特徴をどう捉えるか

これら3社を横断して見たとき、いくつか共通する構造的特徴が浮かび上がります。

第一に、株価の連動性とボラティリティの高さです。技術スタックが根本的に異なるにもかかわらず、これらの銘柄は値動きが近い傾向があり、1日で6〜9%動くことも珍しくないとされ、こうした変動はこのグループの特性と見る向きもあるようです。テーマ性で一括りに売買される局面が多いのかもしれません。

第二に、収益化のステージです。セクター全体がまだ「意味のある売上」の手前の段階にあり、構造的にボラティリティが高いと指摘されています。IonQの売上急増は目を引きますが、業界全体としては研究開発フェーズの色彩が濃いと捉えるのが妥当かもしれません。

第三に、最大の不確実性として、商用量子をこれら専業企業が制するのか、それともBig Techのメガキャップが主導するのかという長期的な論点が残っている点が挙げられます。Google、IBM、Microsoftといった大手が自社開発を進めるなか、専業企業の競争優位がどこまで持続するかは見通しにくい論点と考えられます。

「一番進んでいる企業」をどう評価するか

売上規模と商用化の進捗を重視するなら、直近の成長率と契約実績からIonQが一歩先行していると見る余地があります。財務の健全性(キャッシュ・無借金)では、RigettiとD-Waveがいずれも厚い手元資金を持つとされ、ランウェイの長さは安心材料になりうるでしょう。

ただし、今回のニュースの本質である「論理量子ビットによる実用的なエラー削減」という技術テーマに最も近いのは、繰り返しになりますが中性原子方式のPasqal・QuEra・Atom Computingであり、いずれも非上場です。

中性原子方式の米国での立ち位置について、調べた範囲で整理します。これは技術評価の話なので、投資助言ではなく事実ベースの説明です。

「アメリカで中性原子方式が優れているか」への整理

結論から言うと、「優れている」と言い切れる状況ではなく、複数の方式が競い合っている、というのが調べた範囲での実態のようです。

資料では、現在は超伝導方式とイオントラップ方式が先行しているなかで、ここ数年で中性原子方式が猛追しており、シリコン方式や光方式も含めた「五つ巴」の状況とされています。つまり中性原子は「先行する本命」というより「急速に台頭してきたダークホース」という位置づけで語られることが多いようです。

中性原子方式の強みと弱み

なぜ今回のニュース(エラー削減)の文脈で中性原子が注目されるのか、という点については、方式の特性が関係しているようです。

強みとされるのは、スケーラビリティ(拡張性)です。中性原子方式はレーザー冷却と光ピンセットで原子を操作する技術で、中性原子は互いに同一であるため、イオントラップに比べてスケールアップが容易で、量子ビットの密度を高められる可能性があるとされています。記事のPasqalが採用していた「原子を自由に動かせる」という柔軟性も、この拡張性につながる特徴と考えられます。

エラー訂正との関係でも実績が出ています。ハーバード大学、QuEra Computing、MIT、NISTらの研究グループが、2023年12月に48の論理量子ビットを持ち誤り訂正が可能な中性原子量子コンピュータを実装し、Natureに発表したと報じられています。論理量子ビットを多数扱った実証という点で、今回のPasqalの成果ともテーマが重なります。

一方、弱みもあります。制御精度の面ではイオントラップ方式にやや劣るとされ、今後の改良が期待されている段階のようです。イオントラップ方式は量子ビットの操作精度が非常に高く、エラー訂正の面でも優位性があるとされる一方、スケーラビリティに課題が残っているとされ、ちょうど中性原子と長所短所が逆の関係にあるようです。

アメリカでの中性原子勢の状況

米国の中性原子方式の主要プレーヤーは、QuEra ComputingとAtom Computingです。前述のとおりQuEraはハーバード・MIT発で、Natureの論理量子ビット実証にも関わっているとされ、研究水準では世界の先頭グループにいると見る向きがあるようです。

ただし投資という観点で重要なのは、この両社がいずれも非上場である点です。中性原子方式が技術的に有望だとしても、その純粋な恩恵を米国の公開市場で直接享受する手段は、現時点では限られているという整理になります。

なお間接的な接点として、QuEraはGoogle(Alphabet)、Atom ComputingはMicrosoftと連携しているとされるため、これらメガキャップを通じた間接的なエクスポージャーという考え方はありうるかもしれません。ただしメガキャップにとって量子事業は全体のごく一部にすぎないため、「中性原子方式への投資」と呼べるほど純度の高いものではない、という点には留意が必要かと思います。

まとめると

中性原子方式は、米国の研究水準では先頭グループの一角にあり、とくにスケーラビリティと論理量子ビットの実証という点で今回のニュースと親和性が高い方式と見られます。ただし「他方式より優れている」と断定できる段階ではなく、超伝導・イオントラップとそれぞれ得意分野が異なる競争のさなかにある、というのが妥当な理解かと思います。そして、その中性原子勢の中核企業が非上場であることが、投資の観点では悩ましい点になりそうです。

今後はどこは本流となるのか

現時点(2026年5月)での見方を整理します。引用タグは付けずに書きます。

結論——「本流はまだ確定していない」が大方の見方

調べた範囲では、現時点で「ここが本流になる」と一本化する論調は見当たりませんでした。むしろ各社のロードマップが出そろってきたことで、勝負の焦点が「量子ビットの数」から「質(忠実度)とエラー訂正」へ移ってきた、というのが2026年時点の共通認識のようです。

ただ、強いて陣営を整理すると、次のような構図に見えます。

1. 規模と資本で先行する超伝導陣営(IBM・Google)

現時点で開発リソースが最も大きく、ロードマップが最も具体的なのが超伝導方式です。IBMはエラー訂正の実用化を二本柱の一つに据え、2030年代前半にフォールトトレラント(誤り耐性)量子コンピュータの実現を目標に掲げているとされています。さらにIBMは、量子と高性能計算の協働によって、最初の「量子優位性」が2026年後半までに実現されうると予想しているようです。

Googleも2029年までに100万量子ビット規模の誤り訂正マシンを目指すロードマップを示しているとされ、資本力とロードマップの明確さでは超伝導陣営が一歩リードしているという見方ができそうです。本流の最有力候補を一つ挙げるとすれば、現時点では超伝導方式になる、という整理が穏当かもしれません。

2. 「質」で存在感を増すイオントラップ陣営(IonQ・Quantinuum)

イオントラップ方式はもともと忠実度の高さが強みとされてきました。資料では、IonQの高精度な指標が「質の競争が主役になったこと」を象徴している、と位置づけられています。数で勝負しにくい一方、エラー訂正に有利な高品質という土俵で存在感を保っている陣営と言えそうです。

3. 拡張性で猛追する中性原子陣営(QuEra・Atom Computing・Pasqal)

中性原子方式は大規模配列に強く、量子ビット数の拡張では依然として魅力があるとされています。ただし今後の焦点は「数を増やすこと自体」ではなく、その多数の量子ビットをどう安定して制御し、エラー訂正(QEC)につなげるかに移る、との指摘がありました。前回お話ししたPasqalの論理量子ビットの成果は、まさにこの「数から質・QECへ」という流れに沿った動きと位置づけられそうです。

本流を見極めるうえでの今後の鍵

資料で繰り返し挙げられていたのは、「すごいチップ」だけでは決まらない、という点です。2026年に注目すべきものとして、量子ビットの性能変動をリアルタイムで追跡する技術や、FPGAを用いた高速デコードの進展が挙げられていました。地味に見えても、エラー訂正を実機で回し続けるうえで重要になる部分のようです。

また日本の経産省資料では、海外各社のロードマップが2030年前後での大規模化・実用化を示していること、そして大規模化には高強度レーザーや高速・高感度検出器といった部素材が不可欠で、これらは日本が強みを持つ領域が多いことにも触れられていました。

まとめ

現時点の整理としては、こうなります。資本とロードマップの具体性では超伝導(IBM・Google)が先行する本命格。質・忠実度ではイオントラップ(IonQ・Quantinuum)。拡張性とQECの実証では中性原子(Pasqal・QuEra・Atom)。この三つ巴に、将来の超大規模化を見据えたシリコン・光が控える構図です。

そして重要な前提として、本格的な収益貢献は2020年代末から2030年代とみられており、現時点で勝者を一つに絞るのは時期尚早、というのが大方の論調でした。むしろ「特定の計算は超伝導、別の計算は中性原子」といった方式の使い分けや、古典コンピュータとのハイブリッド運用が標準化に向かっている、という見方も出てきているようです。

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本記事は情報提供を目的としたものであり、投資勧誘や金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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