2003年、2013年、2021年/小型株が主役になった年の終わり方
3つの年とその後の推移
まず、それぞれの年の翌年以降の推移を確認する。
年次の推移を整理すると、次の分布が観測される。
起点の年 | 当年 | 翌年 | 2年後 | 3年後 | 4年後 |
|---|---|---|---|---|---|
2003年 | 46.9% | 17.5% | 4.2% | 18.3% | 1.8%の下落 |
2013年 | 38.7% | 5.0% | 4.5%の下落 | 21.6% | 14.6% |
2021年 | 14.5% | 20.5%の下落 | 16.8% | 10.0% | 12.1% |
数字が示すのは、3つの年がそれぞれ異なる位置にあったという点である。2003年は上昇の起点であり、終点ではなかった。2013年は上昇そのものは続いたものの、相対的な優位が失われる転換点となった。2021年は上昇率が最も小さいにもかかわらず、局面の終点そのものだった。
主導権の移り変わりという観点で見ると、この差はより明確になる。ある分析では、2006年4月から2008年1月にかけて大型株が18%上回り、2008年1月から2014年3月にかけては小型株が28.2%上回ったとされる。続く2014年3月から2020年3月には大型株が56%上回り、2020年3月から2021年3月には小型株が44.4%上回った。そして2021年3月以降、大型株が69%上回る局面が続いてきたとの整理が示されている。
この区切り方に照らすと、2003年の上昇は2006年4月まで続いた局面の初期に位置し、2013年の上昇は2014年3月に終わる局面の終盤に位置する。2021年は、わずか1年ほどの短い優位局面の末尾にあたる。同じく主役の年と呼ばれながら、局面のなかでの位置がまったく異なっていたことになる。
終わり方の3つの型
推移の違いは、終わり方の型の違いとして整理できるとみられる。
2003年からの局面は、緩やかに終わった型に分類される。上昇率は年を追って逓減し、2004年に17.5%、2005年に4.2%と勢いを落としながらも、2006年に18.3%と再び戻す動きを見せた。主導権が大型株へ移ったのは2006年4月とされ、その後も指数自体は2007年まで大きくは崩れなかった。急激な転換ではなく、勢いの逓減を経て主導権が移り、その後に景気後退を伴う下落が訪れるという順序をたどっている。
2013年からの局面は、相対的に終わった型といえる。翌2014年も5.0%の上昇を確保しており、絶対値としては下落していない。それでも同期間の大型株の上昇率を下回り、その後6年間にわたって大型株が56%上回る局面へ入った。小型株を保有していた投資家にとっては、損失を被ったわけではないが、他の選択肢に対して劣後し続けたことになる。この型の終わり方は、下落として認識されにくいぶん、局面の転換に気づきにくい性質を持つと考えられる。
2021年からの局面は、急に終わった型に該当する。年間の上昇率は14.5%にとどまり、その数字だけを見れば過熱を示すものではない。だが指数は年内に頂点をつけ、翌2022年には20.5%の下落となった。上昇率が控えめでありながら終点となった点で、上昇の大きさから局面の残りを推し量ることの難しさを示す事例といえる。
3つの型に共通するのは、終わりが上昇率の大きさと対応していないという点である。最も大きく上昇した2003年が最も長く続き、最も小さく上昇した2021年が最も早く終わった。上昇率を過熱の程度と見なし、そこから残りの期間を推定するという発想は、この3例に照らす限り機能していないとみられる。
投資家の体感という観点でも、3つの型は異なる。緩やかに終わった型では、勢いの逓減が数年にわたるため、途中の年に再び大きく上昇する局面を挟む。2005年の4.2%という減速の後に2006年の18.3%が続いた推移は、転換の判断を難しくする性質を持つ。減速が一時的なものか、局面の終わりの兆候かを、その時点で区別することは容易でない。
相対的に終わった型では、この難しさがさらに増す。指数そのものが上昇を続けているため、下落を経験しないまま局面が終わる。損失が出ていない以上、保有を続ける判断が自然に感じられる一方、他の選択肢との差は開き続ける。この型の終わりは、数年が経過して初めて認識される性質を持つと考えられる。
急に終わった型は、認識という点では最も明快である。翌年に20%規模の下落が生じれば、局面の転換は誰の目にも明らかになる。他方、その明快さは事後にのみ得られるものであり、上昇率が控えめだった年をその時点で終点と判断する材料は乏しかったとみられる。
何が終わりを分けたのか
上昇率が終わりを説明しないのであれば、別の要素が差を生んでいることになる。金融政策と景気循環における位置が、その候補として挙げられる。
2003年は、景気後退からの回復が始まった局面にあたる。前年に20.9%下落した後の反発であり、金融環境は緩和的だった。この局面では小型株が優位に立ちやすいとされ、実際に3年ほど堅調が続いた。主導権が移ったのは、政策金利が5%程度で維持され、景気拡大が後半に入った2006年である。景気循環の初期に始まり、後期に終わるという流れが観測される。
2013年も、金融危機後の回復局面の一部に位置する。政策金利がゼロ近傍に据え置かれた期間に含まれ、緩和的な環境が背景にあった。転換が生じた2014年3月以降は、政策金利が段階的に2.375%まで引き上げられる局面へ移り、大型株の優位が定着した。ここでも、緩和から引き締めへの移行が主導権の交代と重なっている。
2021年は、この対応関係が最も鮮明に現れた事例といえる。2020年3月から2021年3月にかけての小型株の優位は、感染症からの回復の初期にあたり、物価が低く金利も低い環境で生じた。その環境が転換し、金利の上昇が始まると、優位は失われた。局面の長さは1年程度にとどまり、上昇率も控えめだった一方、環境の変化は急激だった。
小型株が金利に感応しやすい構造も、この対応を裏づける要素とされる。小型企業は社債の発行よりも銀行からの借入に依存する傾向があり、事業向け融資の平均的な期間は2年未満とされる。調達期間が短いほど、金利環境の変化が費用に反映される速度は速い。金融環境の転換が、大型株より早く損益に及ぶ構造にあると考えられる。
この整理に立つと、終わりを規定していたのは上昇率ではなく、金融環境と景気循環における位置だったという見方が成り立つ。緩和局面の初期に始まった上昇は長く続き、環境が引き締まる局面に差しかかると終わる。上昇の大きさは、その局面のなかでどこに位置するかを示さない。
指数の構成という要素も、終わり方に影響しうるとみられる。Russell 2000には収益を計上していない企業が一定の比率で含まれ、この比率は年によって変動する。赤字企業の業績は景気の変動に対する感応度が高いとされ、環境が悪化する局面では指数全体の下押し要因として働きやすい。同じ金融環境の転換でも、指数に占める脆弱な企業の比率によって、下落の深さが変わる可能性がある。2008年の34%下落と2022年の20.5%下落という幅の差にも、構成の違いが関与している面があると考えられる。
主導権の交代が長期にわたる性質を持つ点も、終わり方を規定する要素になる。小型株と大型株の優位が入れ替わる循環は10年以上続くこともあるとされ、いったん交代すれば元へ戻るまでに長い期間を要する場合がある。2014年3月から2020年3月までの6年間や、2021年3月以降の推移は、この持続性を示す事例といえる。局面の終わりが一時的な調整にとどまるのか、長期の交代の始まりなのかは、事後にしか判別できない性質を持つとみられる。
2026年はどこに位置するのか
以上を踏まえて現在の位置を考えると、判断を難しくする要素が複数ある。
金融環境の面では、2024年9月から2025年12月にかけて累計175ベーシスポイントの引き下げが行われ、その後は水準が維持されている。緩和が実施された後という点では2003年や2013年と共通する一方、物価が目標を上回るなかで追加の引き下げが見込みにくくなっている点は、緩和の継続を前提としにくい状況を示す。過去3例で終わりを規定した要素が、緩和から引き締めへの移行だったとすれば、その移行が既に始まっているのか、まだ先にあるのかで位置づけは変わる。
景気循環における位置も判別が難しい。2003年や2013年のように後退からの回復初期にあるのか、拡大の後半にあるのかは、事後にしか確定しない性質を持つ。小型株の優位が始まったとされる時点からの経過期間も、過去3例が1年から6年まで幅を持つ以上、経過だけでは判断材料になりにくい。
他方、長期の相対的な位置には特徴がある。2026年6月末時点で、Russell 2000はRussell 3000の時価総額の約4.5%を占め、長期平均の7.6%を下回るとされる。10年の年率収益率も大型株を歴史的に大きな幅で下回った状態が続いている。長期にわたる劣後が積み上がっており、指数の相対的な水準としては低い位置にあるという整理も示されている。主導権の循環が10年以上続くこともあるとされる点を踏まえれば、転換が持続的なものである可能性も残る。
質の構成には注意を要する側面もある。2026年第2四半期のRussell 2000内部では、負債比率の高い銘柄と収益性の低い銘柄が、それぞれ低負債と高収益性の銘柄を上回ったとされる。無配の企業が配当を出す企業を上回る構図も観測される。この分布は、金融環境が緩和的な局面で生じやすい性質を持ち、環境が変われば逆方向に働きうる。
3つの年の比較から導かれるのは、上昇率の大きさで局面の残りを測ることの難しさと、金融環境の転換点を見ることの重要性という2点にあるとみられる。現在の局面がどの型で終わるのかを事前に判別する手段は乏しい。他方、緩やかに終わる型と、相対的に終わる型と、急に終わる型のいずれもが過去に観測されている以上、下落として現れない終わり方もありうるという認識は持てる。終わりの形を予測することと、終わりの兆候を確認する項目を持つことは別の作業であり、後者は局面の判断とは独立に進められると考えられる。
確認できる項目としては、相対的な推移の把握が挙げられる。指数の絶対的な上昇率だけを追っていると、相対的に終わる型の転換を捉えにくい。小型株と大型株の推移を並べて観察し、差がどちらへ開いているかを継続的に見る作業は、下落を伴わない転換を早期に認識する手がかりになりうる。2014年からの局面では、絶対値が上昇を続けるなかで差が開き続けた経緯がある。
金融政策の見通しの変化も、独立に追える項目とみられる。過去3例で転換と重なったのが緩和から引き締めへの移行であった以上、政策の方向に関する市場の想定がどう推移しているかは、局面の位置を測る材料になる。実際の政策変更が生じる前に、想定の側が先に動く場合もあるため、その推移を見ることには意味があると考えられる。
保有する個別企業の性質も、局面の判断とは切り離して点検できる。負債の構成、変動金利への依存度、現金の残りと消費の速度は、環境が転換した際に損益がどう動くかを規定する要素になる。指数の水準がどこにあるかを判断できなくても、保有対象がどの程度の環境変化に耐えうるかは個別に確認できる。3つの年の比較が示すのは、局面の予測の難しさであると同時に、予測に依存しない確認の余地が残されているという点にもあるとみられる。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断は自己責任で行うものとし、記載内容の正確性・完全性について保証するものではない。
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