1. 何があったのか

アンソロピックが公開したClaude Scienceは、ゲノミクス、プロテオミクス、構造生物学、ケモインフォマティクスといった分野の研究者を対象としたAIプラットフォームで、60以上の科学データベースやツールを統合している。研究者は単一のAIインターフェースから、論文レベルの図表生成、複雑なデータセット解析、計算負荷の高いワークフロー管理までを実行できる。NVIDIAのBioNeMo Agent Toolkitとも接続され、Evo 2、Boltz-2、OpenFold3といった専門的な生物学モデルにネイティブアクセスできる点も特徴とされる。提供はPro、Max、Team、Enterprise向けにベータ版として開始された。

2. なぜ今までできなかったのか

創薬研究の現場は、分断されたツール群に長年悩まされてきた。文献検索はPubMed、配列解析はBLAST、構造予測はAlphaFold、分子動力学はGROMACS、統計解析はRやPython、可視化はさらに別ソフト、といった具合に、1つの仮説検証に10種類以上のツールを行き来する状況が常態化していた。研究者の作業時間の大半が、本質的な思考ではなくフォーマット変換やスクリプト調整に消えていたとされる。

さらに、生成AIを研究に使おうとしても、ハルシネーションによる架空の論文引用や再現不可能なコード出力が、査読を通す前提の科学研究では致命傷となる。ChatGPTやGeminiが研究現場で全面採用されない主因はここにあったとみられる。