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NvidiaのVera CPU、88コアでx86陣営を圧倒

Wedbushが2026年7月11日、Nvidia(NASDAQ: NVDA)が自社開発したデータセンター向けCPUVeraを高く評価する調査レポートを発表し、Intel(NASDAQ: INTC)とAMD(NASDAQ: AMD)が長年独占してきた汎用サーバー市場を切り崩す存在になると分析した。88個の自社設計Olympusコアと176スレッドを搭載するVeraは、独立系ベンチマーク(Phoronix)でIntelの128コア旗艦Xeon 6980Pを55%上回り、AMDの64コア高周波EPYC 9575Fを10%上回り、前世代Nvidia Grace CPU比63%の性能向上を実現した。Nvidia CFOのColette Kress氏はCPU事業から今年約$200億の売上、$2,000億のTAMを見通しており、GPUを超えたAI インフラ全層支配戦略が始まっている。同時に、Samsungが2027年にAI PCアクセラレータGaiaで参入予定と報じられ、ArmアーキテクチャがサーバーからPCまで両面からx86を挟撃する構造が明確になった。
NvidiaのVera CPU、88コアでx86陣営を圧倒

何が圧倒しているのか:CPUの土俵で、CPU専業を上回った

まず基本を整理する。CPU(中央処理装置)は、コンピュータの頭脳にあたる基本的な部品で、AIチップ(GPU)の裏で動く監督役のような存在である。過去50年間、CPUの世界はIntelとAMDという2社がx86という設計方式で独占してきた。この2社の存在は、コンピュータ産業の基盤そのものだった。Nvidiaは元々GPUというAI計算専用チップの会社として知られてきた。それが今、CPU業界の本丸に真正面から乗り込み、Intel・AMDのど真ん中で戦い、勝ってしまった。これが今回のニュースの根本的な意味となる。ここで重要なのは、単にGPUの補助として使えるCPUを作ったのではなく、CPU そのものの性能で、Intel・AMDの最新旗艦チップを実際のベンチマークで上回った点である。

何より圧倒しているのか:具体的な数字で見る

Phoronixというコンピュータ性能を専門に測る独立系メディアが2026年5月に実施したベンチマーク結果は、Nvidiaが公式ブログで転載するほど圧倒的な内容となった。

比較対象

Vera CPUの結果

意味

Intel Xeon 6980P(128コア旗艦)

+55%の性能

Intel最上位より1.5倍以上速い

AMD EPYC 9575F(64コア高周波)

+10%の性能

AMD最上位より速い

前世代Nvidia Grace CPU

+63%の性能

1世代で1.6倍のジャンプ

Linux カーネル コンパイル

20秒

Phoronix測定史上最速

コアあたり性能(vs 128コアx86)

2倍

効率で圧倒的

メモリ帯域幅ピーク

1.2 TB/s

LPDDR5X採用

STREAM TRIADテスト

ピーク帯域幅の90%持続

業界最高

このなかで最も注目すべきは、AMDの高周波チップ(5GHzで動く)とIntelの128コアチップという、それぞれ速度重視コア数重視の両方向の最強チップに対して、Nvidiaがバランスで勝った点である。特にIntelの128コアXeonに対して、Nvidiaは88コアで55%上回った。これは、Nvidiaのコア1つが、Intelのコア1つより約2倍速いことを意味する。従来のArm系サーバーCPU(QualcommやAmpereなど)は、コア数を多く積むことで多スレッド性能を稼いでいたが、1コアあたりの性能ではx86に負けていた。Veraは、このArm系はコアあたり性能で負けるという常識を破った初めてのチップとなる。

なぜ圧倒できたのか:4つの技術的理由

理由1:自社設計のOlympusコアを採用

Nvidiaは前世代Grace CPUでは、Armが提供する既製のNeoverse-V2コアを使っていた。Veraでは自社設計のOlympusコアに切り替えた。この意味は大きい。既製のコアは他社(Qualcomm、Amazon、Amperなど)も同じものを使えるため、差別化が困難だった。自社設計コアは、Nvidia独自の最適化を組み込める。同社はInstructions Per Cycle(IPC、1周期あたりの命令実行数)を前世代比1.5倍向上させ、業界の他社が世代ごとに数%〜十数%の改善にとどまるのに対して、圧倒的な世代ジャンプを実現した。

理由2:Spatial Multi-Threading(空間分割マルチスレッディング)

Veraが搭載したSpatial Multi-Threadingは、CPU業界の常識を覆す設計となる。従来のIntel・AMDのCPUはSimultaneous Multi-Threading(SMT)という技術で、2つのスレッド(並列作業)が1つのコアを順番に使う仕組みだった。Veraの Spatial Multi-Threading は、パイプライン(処理経路)、実行ユニット、キャッシュ、レジスタなどを物理的に分離し、2つのスレッドが本当に同時に1コアを使える。これにより、命令レベル並列性、スループット、性能予測性が向上する。素人向けに例えると、従来は1つの調理台を2人の料理人が順番に使うイメージ、Veraは調理台を2つに分けて2人が本当に同時に料理できるイメージとなる。

理由3:メモリ帯域幅が桁違い

CPUは常にメモリからデータを読み書きする必要があり、この速度が全体の性能を大きく左右する。Veraは LPDDR5X という高速メモリを採用し、以下の記録を樹立した。

メモリ関連指標

Vera

従来x86の水準

ピーク帯域幅

1.2 TB/s

数百 GB/s

コアあたり帯域幅

4倍以上(vs x86)

標準

メモリ電力

30W未満

100W超(DDR5搭載時)

STREAM TRIAD持続率

90%

60〜70%程度

コアあたり帯域幅がx86の4倍以上ということは、Vera の各コアは、Intel・AMDのコアより4倍速くデータを取り込めることを意味する。AI推論、データベース処理、コード実行など、データを大量に扱う作業で圧倒的な優位性を持つ。

理由4:GPUとの深い連携

Veraは、Nvidia自社のBlackwell、そして次世代Rubin GPUと物理的・論理的に深く連携する設計となる。NVL72 Vera Rubinラックでは、72個のRubin GPUと36個のVera CPUが1つのラックに統合され、AI 計算の頭脳と筋肉が最短距離で通信できる。他社のCPUとGPUを組み合わせる場合、この通信距離が長くなり、遅延が発生する。Nvidia は自社製CPU + 自社製GPUの垂直統合で、この遅延を根本的に削減する。CPU間通信速度も3.4 TB/sと、業界標準の約3倍となる。

エージェントAI時代のCPU:GPUだけでは足りない理由

Wedbushと業界アナリストが特に注目するのは、Vera がAgentic AI(エージェント型AI)に最適化された設計となる点である。従来のAIは大量のデータを一気に処理する用途が主流で、GPUが並列処理で圧倒的な優位性を持っていた。エージェント型AIは異なる構造となる。AIエージェントはタスクを計画→ツールを呼び出す→結果を読む→次のステップを決定という繰り返しループを実行する。この各ステップは前のステップに依存する逐次的な処理で、並列化しにくい。GPUは苦手、CPU の1コアあたり性能が律速となる。Veraは、このエージェント実行ループを最速で回すために設計された。NvidiaはこれをGPU が解決できないボトルネックと明言している。エージェント型AI市場が拡大するほど、Veraの重要性は増す構造となる。

Samsungの反撃:Arm陣営の両面攻撃

同時期にSamsungが2027年にAI PC向けアクセラレータGaiaを投入する計画も報じられた。Gaiaは4nmプロセスで製造、PIM(メモリ内演算)技術を採用し、NPU(AI 演算専用ユニット)の性能を大幅に強化する。x86陣営が支配してきたPC市場に、Armアーキテクチャのプレイヤーが本格参入する動きとなる。Nvidia自身もRTX SparkというArm系プロセッサをPC市場に投入済み、QualcommもSnapdragon XでWindows on Arm市場を攻略中である。サーバーとPCの両面から、x86陣営が包囲されつつある構造となる。

関連企業と投資視点

企業

関連分野

ティッカー

Nvidia

Vera CPU、Rubin GPU、Olympus コア

NVDA(NASDAQ)

Intel

Xeon、Diamond Rapids開発中

INTC(NASDAQ)

AMD

EPYC Venice(Zen 6、2H26発売)

AMD(NASDAQ)

Samsung Electronics

Gaia AI PCアクセラレータ(2027年)

005930.KS

Qualcomm

Snapdragon X、AI PC

QCOM(NASDAQ)

Arm Holdings

Armアーキテクチャライセンス

ARM(NASDAQ)

TSMC

Vera製造、CoWoS

TSM(NYSE)

SK Hynix

HBM、DRAM、LPDDR5X

SKHY(NASDAQ)

Micron Technology

HBM、DRAM、LPDDR5X

MU(NASDAQ)

Broadcom

AI ASIC、光通信

AVGO(NASDAQ)

Marvell Technology

AI ASIC、NVLink Fusion

MRVL(NASDAQ)

Naver(韓国)

Samsung共同開発のMach経験

035420.KS

Wiwynn(台湾)

Vera Rubin NVL72初期製造

6669.TW

Amazon

AWS Graviton(Arm系サーバーCPU)

AMZN(NASDAQ)

Alphabet

TPU、Google Axion(Arm系CPU)

GOOGL(NASDAQ)

Ampere Computing

Arm系サーバーCPU、Softbank親会社

非上場

投資視点では、この構造は4方向で含意を持つ。第1に、Intelへの構造的圧力である。Xeon 6980Pという128コア旗艦がVeraに55%負けた事実は、Intel の汎用サーバー市場での支配力低下を象徴する。7月に-21%の株価下落を経験したIntelにとって、追加の下方修正リスクが高まる。第2に、AMDへの部分的影響である。AMDのZen 6 Venice(256コア、2H26発売予定)は、AMDが公表するVeraの3.3倍のラック性能を持つと反論しているが、実ベンチマークでの検証は今後となる。AMDは10%程度の差での競争を維持する見込みで、Intelほどのダメージは受けない構造にある。第3に、Nvidia自身の市場拡大である。CFO Kress氏は今年約$200億のCPU売上、$2,000億のTAMを見通しており、GPU一極集中からCPU+GPU+ネットワークの完全な計算インフラプロバイダーへと変身する構造となる。あるアナリストはNvidiaがx86サーバーCPU市場の3分の2を奪う可能性を指摘している。第4に、Armエコシステム全体への追い風である。TSMC、SK Hynix、Micron、Broadcom、Marvellなど、Nvidiaと直接取引するプレイヤーはVera事業拡大の恩恵を受ける。Samsungのように、独自のArm系チップ開発を加速するプレイヤーも増える。

短期・中期の注視ポイント

短期的にはNvidiaのQ2決算(8月中旬)とVeraの2H 2026本格出荷開始が焦点となる。中期的にはAMD EPYC Venice(Zen 6)とIntel Diamond Rapidsの登場時期、それぞれのベンチマーク実測、Vera対Zen 6の直接対決結果が焦点となる。AMD Veniceは256コアという圧倒的コア数で反撃を狙う一方、Veraはコアあたり性能で優位を維持する構造で、両者の得意分野が分岐する。長期的にはx86 vs Armの構造的競争結果が焦点となる。Vera が示したのは、Armアーキテクチャがx86に対して安価な代替品ではなく性能で本格的に上回る本命となり得ることを、Nvidiaが証明したことである。この事実は、コンピュータ産業の50年間の秩序を揺るがす。Intel・AMDのx86独占が2020年代後半にどこまで維持できるか、Amazon Graviton、Google Axion、Microsoft Cobalt、Apple Silicon、Samsung Gaia、そしてNvidia Veraなど、Arm系プロセッサ陣営がどれだけ市場シェアを奪えるか、この構造変化の起点として、Vera の登場は歴史的に位置付けられる可能性がある。素人にも理解しやすい表現でまとめればAI 時代のコンピュータの心臓部が、Intelでもなく、AMDでもなく、Nvidiaになる可能性が、現実の数字で示されつつあるということである。

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