マイクロン、AI時代のメモリ覇権を価格保証契約で固定化。記録的決算と1,000億ドルのRPOが示す構造転換
何があった:四半期売上415億ドル、前年同期比4倍超の記録更新
マイクロンは2026年6月24日、5月28日締めの第3四半期決算を発表した。売上高は415億ドルで、前四半期の239億ドル、前年同期の93億ドルから大幅に拡大した。前年同期比では4倍を超える増収となる。LSEGコンセンサスの358億ドルを大きく上回り、株価は時間外で14%前後上昇し、1,200ドル近辺まで買われたと伝えられている。
売上総利益率は84.9%に達し、これも自社記録とされる。非GAAPベースの希薄化後1株当たり利益は25.11ドルで、市場予想の20.49ドルを2割以上上回った。営業キャッシュフローは254億ドル、設備投資を差し引いた調整後フリーキャッシュフローは183億ドルと、いずれも四半期ベースで記録的水準だったとされる。データセンター向け売上は四半期で250億ドル規模に達したと説明されている。
第4四半期の見通しとして、同社は売上高500億ドル前後、売上総利益率約86%、希薄化後EPS31ドル前後を提示した。前年同期の113億ドルから大きく伸びる計算で、市場が想定していた436億ドル前後の売上予想を上回る強気の数字となっている。
背景:HBMのフル予約と、2027年以降も続くとみられる供給逼迫
この記録的決算の土台にあるのは、生成AI向けの広帯域メモリHBMを中心とした構造的な需給逼迫であろう。マイクロンはHBM製品が完全に予約済みの状態にあり、供給不足が2027年を超えて続くとの見方を示している。経営陣は、中期的に見ても顧客需要の50%から3分の2程度しか満たせない可能性に言及しており、この需給ギャップが価格決定力を支えている構図とみられる。
メモリ業界はかつて、価格変動の激しいシクリカルな性質で知られてきた。今回マイクロンが強調するのは、そのサイクル依存からの脱却を狙う契約構造である。AI時代においてメモリが顧客にとって戦略資産になりつつあるという認識が、長期契約という形に結実しつつあるとみられる。
驚くべきこと:累計1,000億ドルのRPOと、収益認識の構造転換
最も意外性が高いのは、戦略的顧客契約16件がもたらすRPO(残存履行義務)の規模であろう。固定価格、あるいは下限価格と上限価格を伴う契約について、マイクロンは2026年5月期から残存履行義務の開示を始めた。第3四半期末時点のRPOは50億ドル超だが、四半期末以降に締結した契約を含めると、RPOは累計で約1,000億ドルに達すると説明されている。
素材にあった現金預託220億ドルという数字については、決算説明によれば220億ドルは戦略的顧客契約に伴う現金および財務コミットメントの総額であり、そのうち現金預託分は約180億ドル程度とされている点に留意が必要であろう。供給保証を求める顧客が前払いに近い形でコミットしている事実は、需給の逼迫度合いを裏づけるものとみられる。
サンジェイ・メロートラCEOとマーク・マーフィーCFOは、こうした契約がマイクロンの収益の予見性と持続性を高めると説明した。素材にあった前年同期比346%増という増収率や、累計最低1,000億ドルの収益確保という表現、220億ドルがすべて現金預託であるとする記述は、一次情報と照合すると正確ではない可能性が高い。RPOの1,000億ドルは収益保証というより最低数量と最低価格に基づく履行義務の積み上げである点も、解釈に注意がいるであろう。
インパクト:メモリ業界の利益率水準を塗り替える可能性
84.9%という売上総利益率は、半導体メモリという資本集約型ビジネスにおいて前例の乏しい水準とみられる。これが一過性のピークなのか、契約構造によってある程度固定化されるのかが、今後の最大の論点になるであろう。経営陣は、将来収益の相当部分が固定価格または下限・上限価格の契約に基づくものになると説明しており、もしこれが定着すれば、メモリ株のバリュエーションの考え方そのものが変わる可能性がある。
競合のSKハイニックスはエヌビディア向けHBMで先行地位を保つとされ、サムスンを含めた3社による設備増強が将来的に価格を正常化させるとの慎重論も一部にある。供給が需要に追いつく時期について、マイクロン自身が高い確度の見通しを持っていないと述べている点は、強気シナリオの前提が需給逼迫の継続にかかっていることを示しているとみられる。関連する国内サプライチェーンや、HBM・先端パッケージング関連の銘柄群にも、需給観測を通じて波及する可能性がある。
総括:契約構造の定着が問われる局面
今回の決算は、メモリがシクリカルな市況商品から、長期契約で価格と数量が固定される戦略資産へと位置づけを変えつつある可能性を示したとみられる。第4四半期に売上総利益率約86%へのさらなる改善が見込まれる一方、3社の設備増強がいつ需給を緩和させるか、戦略的顧客契約の下限価格がどこまで利益率を支えるかは、引き続き見極めが必要な論点であろう。RPO1,000億ドルという数字の中身と、それがどのペースで売上に転換するかを、今後の四半期で確認していく姿勢が求められるであろう。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行っていただきたい。
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