代替品から「本物」へ──カカオ豆価格7割安が招くチョコレート回帰
ニュースの内容とポイント
第一に、カカオ価格の急落。ICE NYカカオ先物は2025年1月に約10,709ドル/トン(過去最高水準)を付けた後、下落に転じた。報道時点では1万2,000ドル超の高値から約70%下げた水準とされ、足元の相場観測では2026年4月時点で3,100〜3,360ドル/トン前後、5月14日時点で約4,223ドル/トンといった数字も伝えられている。生産回復と需要減退が重なった結果とみられる。
第二に、ハーシーの方針転換。米菓子大手ハーシーが、同社が「チョコレートキャンディー」と呼ぶ代替品のカカオ含有量を引き上げ、2027年までにハーシーズおよびリーセスの全製品を従来の配合に戻す計画を公表した。リーセス創業者の孫による批判が背景にあるとされる。同社は変更理由を消費者の嗜好によるものと説明している。
第三に、コスト構造の逆転。世界のチョコレートの4分の1に原材料を供給するバリーカレボーは、現在のカカオ価格であれば、カカオバターの代わりに植物性油脂を使う代替チョコレートより、本物のチョコレートを製造する方が安く済む場合があると指摘している。
その結果どうなったか/根拠は
代替品シフトの主因だった原料高が解消に向かったことで、メーカーが本物のカカオに戻す経済合理性が生じたという整理ができる。背景には、西アフリカ(コートジボワール、ガーナ)の天候回復による生産量の持ち直しと、高値が続いたことによる消費者離れがある。StoneXは2025/26年度に約28.7万トン、2026/27年度に約26.7万トンの供給過剰を予測しており、需給が緩む方向にあるとされる。
需要面では、今年9月末までの1年間のカカオ需要が9年ぶりの低水準に落ち込む可能性が指摘される一方、価格下落により今年下半期から需要が回復に向かうとの見方も示されている。バリーカレボーは今年8月までの半年間の販売数量について前年同期比1〜5%増を見込むとされる。
その結果はいつ頃・何に繋がるか
カカオ先物の変動が小売価格に反映されるまでには、ヘッジや在庫の存在から10カ月ほどのタイムラグがあるとされる。このため店頭価格の値下げが本格化するのは時間差を伴う形になりやすい。スーパーなどの買い手は2025年半ばごろからメーカーに値下げを迫っており、一部は応じ始めている。モンデリーズは欧州で一部製品を値下げし、販売数量が伸び始めたと発表している。
販売数量が高騰前の水準に戻るには2年半程度かかるとの予想もある。Z世代がカカオ不使用の代替品を受け入れやすいことや、肥満症治療薬が食習慣に与える影響など、複数の小さな潮流が需要回復を緩やかにする要因として挙げられている。メーカーは価格再高騰への備えとして一部の代替製品を残す可能性が高いとみられる。
補足:類似ケースの過去傾向
コモディティ価格は、供給ショックによる急騰後に生産回復と需要破壊が重なって反落する局面が繰り返し観測されてきた。今回のカカオも、2022年まで2,000〜2,500ドル/トン前後だった水準から2025年1月に約5倍へ跳ね上がり、その後ピーク比で約7割下落した。ただし足元でも高騰前の2倍前後の水準にとどまっており、過去の安値圏まで一直線に戻るとは限らないという整理ができる。具体的な再現確率を示す統計的な裏付けは確認できなかったため、ここでは数値での断定は避ける。
テンバガー(10倍株)という観点は、このニュースの性質と相性が悪いので、まずそこを正直に伝えます。
このカカオの話は、巨大な既存メーカー(ハーシー、モンデリーズ、ネスレ、バリーカレボー)が原料安で利益率改善するという内容です。これらは時価総額が数兆円規模の成熟企業なので、構造的に10倍にはなりにくいという整理が成立します。テンバガーは普通、時価総額が小さく成長余地が大きい新興銘柄から出ます。
一先ず、アメリカ上場のカカオ・チョコレート関連銘柄を3つ紹介します。最初に明確にしておくと、いずれも時価総額が大きい成熟株で、テンバガー候補ではなく「原料安と本物回帰の恩恵を受けうる関連銘柄」という位置づけになります。
ハーシー(HSY、NYSE)
今回のニュースの主役です。2027年までに全製品を本来の配合に戻すと表明した当事者。株価は5月24日時点で約195ドル、時価総額は約375〜395億ドル規模。PERは約36倍、配当利回り約2.9〜3.0%。52週レンジは約150〜239ドルで、現状は安値圏から戻し始めた局面という見方が成立する。原料安が原価改善に効く一方、PERが高めで割高感も指摘されうるため、利益率回復が株価に織り込まれる度合いが見どころになる。
モンデリーズ(MDLZ、NASDAQ)
Cadbury、Côte d'Orなどチョコレートブランドを多数持つスナック大手で、原料安の恩恵を受けうる。株価は5月時点で約61〜62ドル。複数の証券会社がBuy寄りで、目標株価を71ドルへ引き上げる動きもあるとされる。一方で決算では原料・コスト面のリスクにも言及されており、慎重な見方も併存する。52週レンジの中間あたりで推移しているという整理になる。
モンデリーズの代替として、より地域分散の効いた切り口を見るなら次が候補になります。
ネスレ(NSRGY、米国OTC ADR)
スイス本社の世界最大級の食品大手で、米国ではADR(店頭)で取引できる。チョコレート(キットカット等)を含む幅広い食品ポートフォリオを持ち、カカオは事業の一部のため、原料安のインパクトは上記2社より相対的に薄まる。逆に言えばカカオ単一テーマへの感応度は低く、分散の効いたディフェンシブな性質という見方が成立する。
補足すると、世界最大手のチョコレート・カカオ加工業者バリーカレボー(スイス上場、米国OTCでBYCBF)も中核の関連銘柄ですが、2026年4月に通期EBITを十数%減益へ下方修正し株価が一時17%下落しており、原料安が即株高につながっていない点は注意が必要です。
いずれも投資判断を保証するものではありません。最終的な売買はご自身の判断でお願いします。
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