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21st Century ROAD to Housing Act成立:住宅法に埋め込まれたCBDC禁止条項が2030年までのデジタルドル凍結を確定、Fed・ホワイトハウス・議会が初めて一致

米東部時間2026年7月11日午前0時、21st Century ROAD to Housing Actがトランプ大統領の署名なしで自動成立し、米連邦準備制度理事会(FRB)による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を2030年12月31日まで禁止する条項が法定化された。同日、ニューハンプシャー州行政評議会は1億ドル規模のビットコイン(BTC)担保債券発行案を3対2で否決した。連邦レベルでのデジタル通貨規制と、州レベルでの暗号資産採用の逆行が同時進行する構造は、米国の金融プライバシー政策と暗号資産政策が明確に分岐しつつあることを示す。トランプ政権が暗号資産に対して大いに支持と表明する一方で、家族の暗号資産事業と距離を置く姿勢を示すなど、政治的な複雑さも並走している。
21st Century ROAD to Housing Act成立:住宅法に埋め込まれたCBDC禁止条項が2030年までのデジタルドル凍結を確定、Fed・ホワイトハウス・議会が初めて一致

何があったのか

21st Century ROAD to Housing Actは、2026年6月に超党派の支持を得て米下院と上院の両方を通過した住宅関連法案で、住宅供給の拡大と住宅費負担の軽減が主な内容である。その中に金融関連条項として、FRBによるCBDCあるいは実質的に同様とみなされるデジタル資産の発行・創設を2030年12月31日まで禁止する条項が含まれていた。この条項は、金融プライバシーや政府による監視への懸念が高まる中、共和党の支持を確保するための妥協策として組み込まれた。トランプ大統領は7月11日、Truth Socialへの投稿で、上院がSAVE America Act(連邦選挙で米国市民権証明と有権者本人確認書類提示を義務付ける法案)の審議を前進させなかったことへの抗議として、住宅関連法案への署名を見送ると表明した。ただし、CBDC禁止条項自体には異議を示していない。米国憲法では、上下両院が可決した法案について大統領が所定期間内に署名も拒否権行使もしなかった場合、議会開会中であれば自動的に法律として成立する。この規定により、21st Century ROAD to Housing Actは大統領署名なしで法律となった。同日、ニューハンプシャー州行政評議会は、州事業金融局(BFA)が2025年11月に承認していた1億ドル規模のBTC担保債券発行案を否決した。ケリー・エイオット州知事が支持していたにもかかわらず、行政評議会のカレン・リオット・ヒル氏、デイブ・ウィーラー氏、ジャネット・スティーブンス氏の3名が反対票を投じた。

CBDC禁止条項の内容

CBDC禁止条項の主な内容は次の通り。

項目

内容

位置付け

禁止対象

FRBによるCBDCまたは実質的同等物の発行・創設

直接発行のみを禁止

禁止期間

2030年12月31日まで

約4年半の一時的規制

対象機関

米連邦準備制度理事会(FRB)

民間ステーブルコインは対象外

例外規定

議会の別途承認があれば発行可能

立法府の関与を担保

監視懸念への対応

金融プライバシー保護を主目的

共和党支持の獲得ツール

民間ステーブルコインへの影響

直接的な規制なし

GENIUS Act等別枠で対応

この条項は、米国が中国のe-CNY、欧州のデジタルユーロなど、他国のCBDC推進とは異なる方向に舵を切ったことを法的に確定させる意味を持つ。同時に、民間ステーブルコイン(USDC、USDT、PayPal USDなど)は禁止対象外であり、米国政府としては政府発行のデジタル通貨は禁止するが、民間発行の米ドル建てデジタル通貨は推進するという二重構造を明確にしている。

ニューハンプシャー州BTC担保債券案の中身

ニューハンプシャー州事業金融局が策定した債券案の構造は次の通りだった。同局が導管発行体(conduit issuer)となり、CleanSpark関連の民間借り手が差し入れるBTCを担保として、最大1億ドルの歳入債を発行する仕組み。州の公的資金や納税者に直接的な返済負担は生じない限定遡及型(limited-recourse)の構造で設計されていた。格付会社ムーディーズは2026年初め、この債券に暫定的なBa2の格付けを付与していた。Ba2は投資適格級を2段階下回る投機的等級で、BTC価格変動と債券の構造・運用に伴う信用リスクを反映したものである。支持者は、2025年にBTC準備金法を成立させたニューハンプシャー州について、今回の債券が米国で最も暗号資産に友好的な州の一つとしての地位を強化すると主張していた。反対した評議員は、価格変動の大きいBTCを州機関が関与する金融取引に利用することへの懸念、州の金融上の評判への影響を理由に挙げた。ニューハンプシャー州を代表する暗号資産推進派のキース・アモン州下院議員は、この決定を極めて近視眼的と批判した。

米国の暗号資産政策の分岐

この2つの動きは、米国の暗号資産・デジタル通貨政策の分岐を明確に示している。

領域

政策方向

主要な動き

政府CBDC

禁止

21st Century ROAD to Housing Act成立

民間ステーブルコイン

推進

GENIUS Act審議、SEC規制明確化

BTC戦略準備金

曖昧

トランプ氏の戦略的BTC準備金構想、法的権限で難航

州レベルBTC活用

逆風増

ニューハンプシャー州債券否決

暗号資産取引所規制

明確化進む

SEC 2026年アジェンダで方針示唆

予測市場(Kalshi等)

対立継続

賭博法との整合性めぐる訴訟

政府CBDCは禁止、民間ステーブルコインは推進という米国の姿勢は、金融プライバシーと自由市場を優先する共和党の伝統的価値観と、暗号資産産業からの政治献金という現実的な要因が複合した結果である。トランプ政権は、2025年から2026年にかけてSEC暗号資産規制の明確化、SEC v. Coinbase訴訟の取り下げ、SEC暗号資産タスクフォース設置などの動きを進めてきた。同時に、トランプ大統領自身が2026年7月に暗号資産を大いに支持と発言する一方で、家族の暗号資産事業(Trump Meme Coin、World Liberty Financial等)とは距離を置く姿勢を強調している。これは家族の暗号資産事業から100万人が計6,200億円の損失を被った一方でトランプ氏本人は大儲けしたとの報道が続く中、政治的リスクを回避する動きとみられる。

関連企業と投資視点

企業

関連分野

ティッカー

CleanSpark

ビットコインマイナー、NH州債券案の裏付け提供予定だった

CLSK(NASDAQ)

MicroStrategy(Strategy)

BTC最大の企業保有者

MSTR(NASDAQ)

Marathon Digital Holdings

ビットコインマイナー

MARA(NASDAQ)

Riot Platforms

ビットコインマイナー

RIOT(NASDAQ)

Coinbase Global

暗号資産取引所

COIN(NASDAQ)

Robinhood Markets

暗号資産取扱ブローカー

HOOD(NASDAQ)

Circle Internet Financial

USDC発行体

CRCL(NASDAQ)

PayPal Holdings

PayPal USD(ステーブルコイン)

PYPL(NASDAQ)

Block(旧Square)

Cash App、BTC取扱

XYZ(NYSE)

BlackRock

iShares Bitcoin Trust(IBIT)運用

BLK(NYSE)

Fidelity Wise Origin Bitcoin Fund

BTC ETF

FBTC(Cboe)

Grayscale Bitcoin Trust

BTC ETF

GBTC(NYSE Arca)

Bitwise Bitcoin ETF

BTC ETF

BITB(NYSE Arca)

CME Group

BTC先物取引所

CME(NASDAQ)

Bakkt Holdings

機関投資家向けBTCサービス

BKKT(NYSE)

Galaxy Digital

暗号資産金融サービス

GLXY(NASDAQ)

Silvergate Capital

破綻済み、暗号資産銀行の教訓

上場廃止

Signature Bank

破綻済み、暗号資産銀行の教訓

上場廃止

JPMorgan Chase

JPM Coin、トークン化MMF、機関向けブロックチェーン

JPM(NYSE)

投資視点では、この動きは5方向で含意を持つ。第1に、CBDC禁止の恒久化リスクである。2030年12月31日という期限が近づく2029〜2030年に、議会が禁止延長法案を可決するか、あるいはCBDC発行を承認するかが、米国のデジタル通貨政策の長期方向を規定する。禁止延長が続けば、民間ステーブルコイン発行体(Circle、PayPal、Ripple等)にとって構造的な追い風となる。第2に、州レベルBTC活用の逆行トレンドである。ニューハンプシャー州の否決は、他の州(テキサス、フロリダ、ワイオミング、ミシガンなど)のBTC戦略にも影響を及ぼす可能性がある。政治的な支持基盤の変化や、BTC価格変動への警戒感が、州レベルの動きを制約する構造となる。第3に、企業BTC保有戦略への影響である。Strategy、Metaplanet、Twenty One Capitalなど企業BTC保有戦略の主要プレイヤーにとって、州レベルの信任低下は間接的な逆風となる可能性がある。第4に、CleanSparkなど特定マイナーへの影響である。NH州債券案でBTCを担保として差し入れる予定だったCleanSparkは、この否決で直接的な資金調達機会を失った。同様の構造を他州で試みる可能性はあるが、成功確率は低下したとみられる。第5に、規制環境の全体像である。SEC、CFTC、財務省、FRBの4機関が個別に暗号資産規制を進める中、包括的な暗号資産市場構造法(CLARITY Act)の8月6日採決が次の焦点となる。

短期・中期の注視ポイント

短期的にはCLARITY Actの採決結果と、SEC暗号資産規制明確化の進展が焦点となる。CLARITY Actが暗号資産をどのカテゴリーに分類するか、SECとCFTCの管轄をどう分けるかで、暗号資産関連銘柄の中期評価が大きく変わる。中期的にはトランプ政権の戦略的BTC準備金構想の実装可能性が焦点となる。法的権限と所管を巡る難航が続いており、実現時期は依然として不透明である。ステーブルコイン規制のGENIUS Actの成立時期も、Circle、PayPal、Coinbaseなどの評価に直接影響する。長期的には2030年のCBDC禁止期限が最大の変数となる。この間、中国e-CNY、欧州デジタルユーロ、日本デジタル円構想が並走する中、米国だけが政府CBDCを持たない構造が続くと、国際決済における米ドル基軸通貨の地位への影響が徐々に顕在化する可能性がある。一方、民間ステーブルコインが実質的にCBDCの役割を担うシャドウCBDC的な構造が定着すれば、米国は独自の金融覇権モデルを維持できるとみられる。今回の21st Century ROAD to Housing Act成立とNH州債券否決は、米国の暗号資産・デジタル通貨政策が政府デジタル通貨は禁止、民間デジタル通貨は推進、州レベルBTC活用は選別という三層構造に落ち着きつつあることを示す象徴的な動きとして位置付けられる。

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本記事は情報提供を目的としたものであり、投資勧誘や金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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