生存バイアスが覆い隠す母集団

テンバガー分析の多くは、結果として生き残った銘柄のみを対象に成功要因を逆算する構造を持つ。同じテーマ、同じ時価総額レンジから出発した母集団のうち、どれだけが消滅したかという分母が視野から外れるため、成功要因とされた特徴が実際には消滅側にも共通していた可能性が検証されにくい。

実際、量子コンピューティング、ドローン、核燃料、宇宙、生成AI周辺のいずれのテーマでも、上昇局面では時価総額1億ドル前後の赤字企業が同時に複数上場していた局面が観察される。その時点での差異は、売上高の絶対額が数百万ドル規模か1000万ドル台かという程度にとどまることも多く、技術的優位性の記述はいずれの企業の資料にも似たトーンで並んでいたとされる。

分母が見えにくい理由は技術的な側面にもあるとみられる。上場廃止後にティッカーがスクリーニングツールから外れ、指数構成からも除外されるため、後年に過去データを遡っても消滅した銘柄が集計対象に残りにくい。結果として、テーマ全体の期待値が生存銘柄のリターンで代表されてしまう歪みが生じやすい構造にあると考えられる。