AI相場の主役はGPUから電力に移りつつあるのか
AI投資をめぐる相場の関心が、演算装置そのものから、それを動かす電力インフラへと移りつつある兆候が観測される。2026年に入り、GE VernovaやVertiv、Eatonといった電力・冷却インフラ企業が週次のパフォーマンスでNvidiaを上回る場面が現れ、公益株指数は年初来で2019年以来の強い出足を記録したとされる。背景には、AIデータセンターの建設速度を規定する制約が、GPUの調達可能性から、送電網への接続可否と電力の確保へと移行したという産業側の構造変化がある。ただし、この移行がどこまで進み、どこまでが株価に織り込まれたのかについては見方が分かれる。本稿では、制約の所在がどう移ったのか、その変化が相場でどう評価されているのか、そして残された論点は何かを、産業構造の観点から整理する。特定銘柄の売買を論じるものではなく、テーマの構造変化を解読することを主眼とする。
制約の所在はどこへ移ったのか
AI基盤の構築を律速する要因は、この数年で位置を変えてきたとみられる。2023年から2024年にかけての制約は、明確にGPUの供給側にあった。TSMCのCoWoS先端パッケージング能力と、SK HynixなどのHBM供給が実質的なボトルネックを構成し、演算能力を確保できるかどうかが基盤構築の可否を決めていた構図とされる。
この供給制約は、TSMCがCoWoS能力を段階的に拡張したことで緩和に向かった。2025年に生産能力が倍増し、2026年に向けてさらなる倍増が計画されているとされ、GPUの出荷量もこれに応じて拡大した。もっとも、GPUが潤沢になったという意味ではない。需要は2027年まで供給を1.4倍から1.6倍上回ると見積もられ、ハイパースケーラーが複数年契約で割り当ての多くを押さえた結果、中小のクラウド事業者が調達に苦慮する構図は残っているとされる。変化したのは制約の絶対量ではなく、その形状とみられる。
他方、電力網の側は同じ速度で拡張しなかった。送電網への接続待ち行列、変圧器の製造能力、電力会社の設備投資計画は、いずれも年単位の周期で動く領域であり、半導体の世代交代の速度に追随していない。接続までの待機期間が平均で4年に及ぶとの集計もあり、この時間軸の非対称性が制約の移動を生んだと考えられる。
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