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創業者がまだCEOの小型株だけを集めるとどう見えるか

創業者が経営を続けている企業を選び出すという条件は、財務指標ではなく人の属性でふるいをかける点で、通常のスクリーニングと性質が異なる。時価総額の下限と上限を小型株に絞り、そのうえで創業者が現任のCEOであることを条件に加えると、残る集合には業種と企業年齢の偏りが強く出るとみられる。学術研究では、創業者CEO企業が研究開発と設備投資に厚く配分し、超過リターンを生んだとする結果が繰り返し報告されてきた一方、2022年以降は差が縮んだとする観察も出ている。ここでは、この条件で母集団を作ったときに何が見えるのか、そして何が構造的に見えなくなるのかを整理していく。
創業者がまだCEOの小型株だけを集めるとどう見えるか

人の属性で切ると母集団の形が変わる

創業者が現任という条件は、実質的に企業年齢のフィルターとして働く。創業から経営交代までの期間は業種によって幅があるものの、上場後に事業が成熟し、資本市場からの要求が運営管理へ移る局面で職業経営者への交代が起きやすい。したがってこの条件を通過する集合には、上場から日が浅い企業、SPACや直接上場を含む近年の新規公開組、そして創業者が支配的な持分を保持したまま外部資本を受け入れてきた企業が集まりやすいとみられる。時価総額を小型に限定すると、この傾向はさらに強まる。大型株では創業者CEOの比率が1割強にとどまるという古典的な観測があるが、小型株では創業年が新しい分だけ比率が上がる構造になる。

業種の偏りも生じる。研究開発の比重が高い領域や、規制や技術の変化が早く、判断の速度そのものが競争条件になる領域では、創業者が指揮を執り続ける合理性が残りやすい。逆に、成熟した製造業や規制産業では、資本配分と組織運営の技能が求められる度合いが高く、早期に交代が進む傾向があるとされる。結果として、この条件で残る小型株の集合は、防衛・無人機、音声や画像のAI、半導体周辺、フィンテックといった分野に寄り、公益や生活必需品はほとんど残らないと考えられる。つまり、創業者CEOという条件で得られる超過リターンらしきものの一部は、経営者の属性ではなく業種と企業年齢の効果を拾っている可能性がある。この点を切り分けないまま比較すると、判断材料としての精度が落ちる。

もう1つ、小型株という制約が独自の影響を持つ。時価総額が小さい企業は指数への採用が限られ、アナリストによる調査対象からも外れやすいため、情報の非対称が残りやすい。創業者が発信の中心にいる企業では、決算説明や個人投資家向けの場で経営者本人が語る量が多く、そこで示される見通しが株価形成に直接反映されやすい構造も生まれる。この情報の流れ方は、開示が精緻な大型株とは性質が異なり、経営者の言葉の重みが数字の裏付けを上回る局面を作りうる。創業者CEOという条件を課した母集団は、こうした情報環境の特性ごと選び取っていることになるとみられる。

学術的な検証が示してきたこと

この主題には比較的長い研究の蓄積がある。Fahlenbrachによる分析では、1993年から2002年にかけて創業者CEO企業に等加重で投資した場合、ベンチマーク調整後で年率8.3%の超過収益が得られたと報告され、企業属性や経営者属性、業種の影響を統制した後でも年率4.4%の異常収益が残るとされた。同じ研究は、創業者CEO企業が研究開発費と設備投資を厚く配分し、買収においても事業の隣接性が高い案件を選ぶ傾向を指摘している。S&P500を対象とした別の分析では、創業者が経営する企業の研究開発費比率が4.8%と、そうでない企業の3.2%を上回るという数値が示されている。

一方で、結果は前提に敏感でもある。新規公開企業を対象とした長期パフォーマンスの研究では、創業者CEO企業の優位はベンチマークの選択、加重方法、ファクターモデルの指定によって有意性が揺れ、高技術分野に限った場合にのみ一貫した差が確認されたとされる。近年の観察はさらに慎重で、クラウド関連の指数構成銘柄を創業者経営とそれ以外に分けた比較では、2018年から2021年にかけて開いていた差が2022年以降のバリュエーション調整局面で収束したという指摘が出ている。金利上昇で長期の投資姿勢が割り引かれる環境では、創業者に固有とされてきた長期志向がむしろ重荷として評価される局面があったとも読める。研究が支持しているのは、創業者CEOという属性が投資行動の型と結び付いているという点であり、その型が常に報われるという含意ではないと考えられる。

交代そのものを扱った観察も参考になる。2005年に発表された分析では、創業者が経営を続けた企業の3年間の市場調整後リターンが12%、存続率が73%だったのに対し、職業経営者を招いて創業者が別の役職へ移った企業ではリターンが-26%、存続率が60%だったという対比が示されている。1998年から2010年を対象とした別の検証では、時価総額や期間を問わず創業者経営企業がベンチマークを上回り、シャープ・レシオや下方リスクを加味した指標でも優位が確認されたと報告されている。ただし、これらの検証が対象とした期間は、低金利と技術投資の拡大が重なった局面を多く含む。小型株かつ近年の上場という条件を重ねた集合に、そのまま外挿できるかは慎重に見る余地があるとみられる。

残る銘柄に共通して現れる財務の型

小型株の範囲で創業者が現任のまま指揮を執っている例としては、以下のような企業が挙げられる。情報整理として位置づけを並べたもので、選好を示すものではない。

ティッカー

領域

創業者CEO

経営体制の特徴

ONDS

無人機・私設無線

Eric Brock

会長兼CEOとして2つの事業単位を統括、投資銀行と運用の経歴を背景に資本市場との接点が厚い

RCAT

防衛用ドローン

Jeff Thompson

2016年の創業から一貫して指揮、直近開示で8%台の持分を保有

SOUN

音声AI

Keyvan Mohajer

2004年創業、2026年3月のCFO退任時には共同創業者が暫定CFOを兼務

並べてみると、いくつかの共通した型が浮かぶ。まず、内部者の持分比率が高く、経営判断と株主としての損益が同じ方向を向きやすい構造になっている。次に、資金調達は増資に依存する度合いが高く、希薄化が継続的なコストとして効いてくる。研究開発と生産能力への先行投資を優先する姿勢は、収益化の遅れとして表面化しやすい。加えて、業績見通しの出し方にも特徴が出る。RCATは政府調達の確定を待って通期見通しの提示を控える判断を示しており、四半期ごとの予見可能性より、受注の確度が固まるまで数字を置かない姿勢が優先されている。第2四半期の売上が前年同期比で5倍を超えて2,020万ドルとなる一方、下期の粗利率には製品構成と稼働余力の影響が及ぶとされる状況も、この型と整合的とみられる。SOUNの事例では、財務責任者の交代局面で共同創業者が暫定的に職務を担っており、経営層の層の薄さが人事の柔軟性と表裏になっている点が読み取れる。創業からの在任期間が20年を超える経営者と、創業初期からの共同創業者が製品と財務の両方を見る体制は、意思決定の一貫性という面では強みになる一方、外部からの視点が入りにくい構図でもある。

ONDSの側でも、赤字の底を第2四半期と見込みつつ、実際の黒字化は下期の売上の立ち上がり次第という説明がなされ、買収した事業に伴う稼働余力と製品構成の影響で下期の粗利率に圧力がかかる可能性が示されている。ここに共通するのは、時間軸の置き方が四半期ではなく事業の立ち上がりに合わせられている点で、これは研究が指摘してきた長期志向の投資行動と整合的とみられる。ただし、その姿勢は資金の裏付けを前提とするため、増資の条件が悪化する局面では計画そのものを縮める必要が生じる。創業者経営という属性が持つ強みと弱みは、同じ資本政策の上に同居していると考えられる。

このスクリーンが取りこぼすもの

最も大きい死角は、条件そのものに生存者バイアスが組み込まれている点にある。創業者が現任という条件は、退任した創業者の企業を自動的に除外するため、過去に遡って母集団を構成すると、うまくいった企業だけが残る形になりやすい。買収案件を扱った研究では、創業者の存在に由来する価値が退任によって失われる方向に働くという結果が示されており、創業者の在任は継続的な前提ではなく、いつでも消えうる状態変数として扱う必要があると考えられる。

次に、統治構造の論点がある。創業者に権限が集中する体制は、意思決定の速度と引き換えに、取締役会による牽制が働きにくい状況を生みやすい。種類株による議決権の集中が併存する場合、一般株主が経営方針の転換を求める経路は実質的に限られる。理論的にも、強い権限を持つ創業者が機会主義的に振る舞う余地は早くから指摘されてきた。加えて、単一の人物に依存する体制は、健康問題や離脱といった事象が企業価値の相当部分に直結する構造でもある。小型株の場合、後継者層が薄く、外部から経営者を招く際の条件も不利になりやすいため、この依存度は大型株より高く出るとみられる。

もう1つ見落とされやすいのが、条件の定義そのものの曖昧さになる。共同創業者が複数いる企業でどこまでを創業者とみなすか、合併や再編を経て法人格が変わった企業で創業の起点をどこに置くか、SPACを通じた上場で経営陣が入れ替わった場合をどう扱うかによって、同じ意図のスクリーンでも母集団が入れ替わる。実務的には、創業者かどうかという二値の判定より、持分比率と在任年数、取締役会における独立取締役の比率を組み合わせて濃淡で捉える方が、実態に近い整理になると考えられる。

観察を設計するための条件

この条件で母集団を作るなら、属性の効果と業種の効果を分けて追う設計が要る。同一業種内で創業者経営とそうでない企業を比較し、研究開発費比率と設備投資比率、増資による発行済株式数の増加率、営業キャッシュ・フローの推移を並べれば、投資行動の型が実際に差として現れているかを確認できる。開示面では、四半期ごとの持分報告や内部者取引の届出、経営陣の交代を伝える臨時報告が、状態変数の変化を捉える手掛かりになる。創業者の持分が継続的に減っている企業では、担保差し入れや売却計画に基づく定期売却なのか、方針の変化を伴うものなのかで意味が変わるため、届出の種別まで見る必要がある。役員報酬の構成が株式報酬に寄っているか現金に寄っているかも、経営者が見ている時間軸を推し量る材料になるとみられる。

反証条件も置いておきたい。研究開発と設備投資に厚く配分する型が価値に結び付くという前提が成り立たなくなるのは、資金調達コストが高止まりし、希薄化の負担が成長の寄与を上回る局面とみられる。2022年以降に差が収束したという観察は、その局面が実際に起きうることを示している。逆に、金利環境が落ち着き、長期の投資回収が再び評価される局面では、この型が優位に戻る可能性がある。創業者CEOという条件は、超過収益を約束する印というより、投資行動の型を絞り込むための代理変数として扱う方が、観察の精度を保ちやすいと考えられる。

免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断は自己責任で行うものとし、記載内容の正確性・完全性について保証するものではない。

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