大手からの離脱が新設企業を生む構造

技術者が在籍していた企業を離れて設立に踏み切る局面には、いくつかの共通した背景があるとされる。まず、既存製品との共食いを避ける判断が社内で働き、収益基盤を毀損しかねない技術路線が採用されにくい構造がある。次に、大企業の資源配分は既存事業の規模に比例して決まる傾向があり、市場がまだ形成されていない領域への投入は後回しになりやすい。さらに、開発期間の見積もりが四半期単位の業績管理と噛み合わない場合、社内での継続が困難になる。

この構造から導かれるのは、新設企業が参入する領域が、大手にとって手が回らなかった場所ではなく、判断の結果として意図的に空けられた場所である場合が多いという点にある。既存企業が技術的に実装できないわけではなく、実装しない合理性を持っていたという構図であり、参入者にとっては当面の直接競合が生じにくい状況が生まれる可能性がある。

もう1つの特徴は、離脱が個人単位ではなくチーム単位で起きる場合がある点にある。着想だけでなく開発体制がそのまま移転すると、試作までの到達速度が個人創業の企業と大きく異なる展開になり得る。加えて、顧客の要求仕様や業界規格に関する知識も同時に移るため、初期の商談相手が前職時代の取引先と重なる例が観察される。