強制ライセンスは避けつつ国家機密の物差しで測る、米トランプ大統領が6月2日に署名した先端AI大統領令が示す自主的だが事実上避けがたいフロンティアモデル規制の新しい型
2026年6月2日、トランプ大統領が大統領令Promoting Advanced Artificial Intelligence Innovation and Security(先端AIイノベーション・安全性の促進)に署名した。NSA(国家安全保障局)に機密ベンチマーキング・プロセスの構築を指示し、サイバー能力で閾値を超えるAIモデルをcovered frontier model(対象フロンティアモデル)として指定する枠組みを定めた。指定モデルの開発者は、広範な公開前に最長30日間、政府が早期アクセスする自主的フレームワークに参加できる。強制ライセンスや事前認可は明示的に禁止された上で、自主参加企業が信頼パートナーとして政府契約や情報共有で優位を得る構造が組み込まれた点が特徴である。10日後の6月12日にClaude Fable 5/Mythos 5に対する商務省の輸出管理発動が起きており、自主と強制の境界が現実に試される局面に入ったとみられる。
1. 何があったのか
ホワイトハウスは2026年6月2日、大統領令Promoting Advanced Artificial Intelligence Innovation and Security(EO)を公布した。Sec.2(米国システムの先端AI対応強化)、Sec.3(セキュアなフロンティアモデル展開)、Sec.4(犯罪行為からの保護)の3本柱で構成され、サイバーセキュリティと国家安全保障に焦点を絞った内容である。Sec.3の中核は、財務省・国防総省(NSA経由)・国土安全保障省(CISA経由)が、国家サイバーディレクター(NCD)、大統領科学技術補佐官(APST)、NIST(国立標準技術研究所)と協議して、60日以内(2026年7月31日まで)に機密ベンチマーキング・プロセスを構築することにある。指定権限はNSA長官が他関係機関と協議の上で持つ。指定された開発者は、信頼パートナーへの公開前最長30日間、政府が早期アクセスする自主的フレームワークに参加できる。同令は明示的に強制ライセンスや事前承認制度を否定しており、参加はあくまで任意である。6月5日には別途、国家安全保障エンタープライズにおけるAIに関するNSPMが発出され、国防・情報機関でのAI調達枠組みが整備された。
2. なぜ今までできなかったのか
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